本:『正欲』を紹介します!
今回は、【 『正欲』 の名言7選と感想・あらすじ】を、本:『正欲』を基に紹介します。
※本記事にはネタバレが含まれていますので注意してください。
目次
本:『正欲』とは?
第19回本屋大賞にノミネートされ、第34回柴田錬三郎賞を受賞したことでも知られる、朝井リョウさんの長編小説です。
本書は「多様性」をテーマにしていますが、巷に溢れる多様性を礼賛するものとは全く違います。
どちらかというと、「多様性を礼賛しているマイノリティ(多数派)」に疑問を呈して、「想像することも難しいマジョリティ(少数派)」に焦点を当てている本です。
今までほとんど書かれてこなかった視点ですが、読み進めていく内にこれがリアルだと思わせられる説得力があり、読み終わった後には世界が全く違うように見えるほどの衝撃的な内容です。
文章はさすがに読みやすくて、朝井リョウさん独特の皮肉たっぷりの言い回しや会話を楽しむことが出来ると思います。
全体的に重いテーマを扱っており、読んでいて少し苦しくなる場面や、後味が悪い部分もありますので、万人におすすめできる小説ではありませんが、私はこの本を読んで色々と考えるきっかけになり良かったと思っています。
ハナハナおすすめの一冊です。
名言7選と感想
うるせえ黙れ、と。
この文章を読んでいるということは、あなたもこう思っていると思います。 うるせえ黙れ、と。
本:『正欲』 より
上記は、冒頭の「多様性」について書かれた文章。
一見取り留めのない言葉がだらだらと続いており、これを読んだ人は私を含めて「何を聞かされているんだろう?」と感じたと思いますが、そのような考えを見越してなのか、的確な突っ込みを入れている場面です。
本を最後まで読んだ方は、上記の文章の意味が分かると思いますが、私も初めて「うるせえ黙れ」を読んだときには思わず笑ってしまいました。
物語の重要な伏線になっている場面で、尚且つ初めて読む人も楽しめる文章になっているところは、さすが朝井リョウさんだと感じました。
「よかった、って思ったんだ」
「親が死んだとき、まず」 佳道の声が聞こえる。「よかった、って思ったんだ」
本:『正欲』 より
夏月が、自殺を考えていた佳道とホテルの一室で会話している場面。
佳道の両親が交通事故で亡くなり、そのことで佳道が思った「よかった」という言葉。
本来は悲しいはずの両親の死ですが、佳道が特殊性癖であるが故に、何よりもそのことに両親が気づかずに死んでいって良かったという心境は、特殊性癖の孤独さを表している象徴的な場面です。
「誰も、ひとりでいないといいよ」
「その人、ひとりでいないといいね」 うん、と、佳道は頷く。「誰も、ひとりでいないといいよ」 うん、と、夏月も頷く。
本:『正欲』 より
今まで、マイノリティ(多数派)には想像もできないようなマジョリティ(少数派)として孤独に生きてきた夏月と佳道。
その二人がほとんど初めて他人と繋がることができて、まだ誰とも繋がっていないかもしれない「SATORU FUJIWARA」を心配している場面。
今まで、本書では本当の意味でのマジョリティの孤独な場面が多く書かれてきましたが、二人にとっても読者にとっても、少しですが明るい未来の到来を予感させる名言です。
繫がりながら生きていける世界のほうがいいなって思う
「それよりも、どんなふうに生まれたって、どんな道を選んだって、新しい友達とか、社会とか、そういうものと繫がりながら生きていける世界のほうがいいなって思う」
本:『正欲』 より
啓喜は、検察官として常に法律と向き合っているということもあり、マイノリティに思考が傾いているように見える。
それとは対照的に、不登校の息子と関わる内に、マジョリティであっても他者との繋がりがあれば、生きていけると考える由美。
両者の違いは、そのまま「マイノリティ」と「マジョリティ」の埋められない溝のようで、本当の意味での多様性の難しさを表しているように感じます。
〝多数派にずっと立ち続ける〟ことは立派な少数派である
三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、〝多数派にずっと立ち続ける〟ことは立派な少数派であることに。
本:『正欲』 より
多数派とは、その時の状態を表す言葉で、決して永遠に続くものではない。
多数派は常に不安だから、多数派であることを共有し合い、自分が異物だと思っている存在を確かめ、排除しようとする。
"多数派にずっと立ち続けることは立派な少数派"という言葉はすごく共感できますし、できることなら多くの人がそのことを認識して、このくだらない多数決が早く終わればいいなと思ってしまいますね。
あんたたちだけが特別不自由なわけじゃない
「不幸だからって何してもいいわけじゃないよ。同意がなかったらキスだってセックスだって犯罪だもん。別にあんたたちだけが特別不自由なわけじゃない」
本:『正欲』 より
八重子は、マイノリティの側にいるのに上手くできなくて、選択肢が多い分だけ余計に傷ついて、苦しみながら生きてきた。
自分の不幸に酔っていた部分がある大也に対して、八重子がマイノリティでも不自由さを抱えているということを伝えた場面。
マイノリティでもマジョリティでも、結局は法律から外れた行為は犯罪で、決められたルールの中で、自分とどう折り合いをつけていくかということですね。
あってはならない感情なんて、この世にない
「あってはならない感情なんて、この世にないんだから」
本:『正欲』 より
今まで自分の感情を否定して生きてきた大也が、八重子と話している内に、自分の考え方を肯定できるようになった場面。
八重子がたびたび語ってきた「繋がり」が大也の心に届き、前向きに生きていこうと大きな一歩を踏み出した感動的な名言です。
物語的には序盤から暗い場面が続き、徐々に明るい未来が見えてきたように感じますが、、、、。
結末はご自身で本を読んで知った方がいいと思いますので、本記事はこの辺りで終わりとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎
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