本:『逆ソクラテス』を紹介します!
今回は、【 『逆ソクラテス』の名言7選と感想・内容】を、本:『逆ソクラテス』を基に紹介します。
※本記事にはネタバレが含まれていますので注意してください。
目次
本:『逆ソクラテス』とは?
伊坂幸太郎さんの短編集で、第33回柴田錬三郎賞を受賞したことでも知られています。
伊坂幸太郎さんとしては珍しく、全ての短編で子どもが主人公になっています。
短編集というと、作品毎に当たり外れがあることが多いですが、本書はどの作品も忖度なしで面白くて、伊坂幸太郎さん独特の皮肉の効いた会話や伏線回収は見事で、 伊坂ワールド全開の短編集となっています。
「最終的には、真面目で約束を守る人間が勝つ」「威張らないやつが勝つ」など、読んでいて気持のいいお話しが多く、読後の爽快感もとても良く、読んでいて勇気をもらえる内容になっています。
ハナハナおすすめの一冊です。
名言7選と感想・内容
「俺はそうは思わないけど」
「俺はそうは思わないけど」
本:『逆ソクラテス』 より
クラスのガキ大将的な存在である土田が、あまり目立たない草壁を「クサ子ちゃん」と呼んでいた。
土田は、草壁をクサ子ちゃんと呼んでいる理由について、過去に草壁が「ピンクの服を着ていて女みたいだったから」と言ったが、上記はそれを聞いた安斎の言葉。
本書の全体を通して「先入観」という言葉が一つのキーワードになっていますが、安斎は先入観に対抗するための裏技として上記の言葉を活用しています。
「逆ソクラテス」の中にも、先入観に囚われている象徴的な人物として、担任の久留米先生が登場しますが、3人の子どもたちが久留米先生の先入観をひっくり返そうと計画して実行していく様は痛快で、とても読みごたえがあります。
大人になればなるほど「先入観」に囚われることが多く、自分自身も頭が固くなったと感じることが多々あります。
本書に出てくる子どもたちのように、『僕はそうは思わない』を心に留めて柔軟な思考でありたいですね。
最終的には、威張らないやつが勝つよ
「でもな、最終的には、威張らないやつが勝つよ」
本:『逆ソクラテス』 より
小学校5年生の時に、担任の磯憲が廊下でささやくように語った言葉。
司と悠太は足が遅いことを気にしているが、大人になってモテるのは、足が速いやつでは無くて、最終的には威張らないやつである。
初めてこの場面を読んだ時は、「磯憲良いこと言うじゃん」くらいにしか思っていませんでしたが、本を読み進めて渋谷亜矢や村田花の過去を知った後は、磯憲の頭に2人のことが思い浮かんでいたんだろうなと感じました。
威張って王様のように振舞っていると、どこかのタイミングで疎まれてコミュニティーから外されてしまう。
私も、学生時代にそのような場面に遭遇したことがありますので、今後の戒めとしても他者に威張らないように気を付けたいと感じました。
「最後に笑うのは」「はい」「我々だ」
「ドン・コルレオーネ、さすがです」「最後に笑うのは」「はい」「我々だ」
本:『逆ソクラテス』 より
司と悠太は、映画「ゴッドファーザー」に登場するドン・コルレオーネと依頼人の会話を真似して、現実世界で嫌な人がいると、映画の中のセリフに当てはめるという遊びをしていた。
上記は、運動会のリレー練習後の帰り道に、 司と悠太のあいだで行われたゴットファーザー風の会話。
今までは、嫌な人をゴットファーザー風の会話に当てはめて、最後には「消せ」と言うことが多かったですが、今回は前向きな言葉で終わっており、運動会の練習でタイムも縮まってきて目標に向かって頑張る二人の気持ちが表れている場面になっています。
それ以降の展開を期待できる、ワクワクさせてくれる名言です。
心の中でそっと思っておくといい。可哀想に、って
「もし、平気で他人に迷惑をかける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀想に、って」
本:『逆ソクラテス』 より
新任の久保先生が受け持つクラスでは、生徒が授業中に缶タイプの筆入れを机から落とし、大きな音を立てて授業を妨害する行為が常態化していた。
授業参観の日にも缶ペン落としが行われ、上記はそれに対して久保先生が生徒と保護者に語った言葉。
久保先生は直接生徒に注意したわけではありませんが、生徒の誰もが騎士達のことを「可哀そうな人たち」と思ったことでしょう。
本人たちにとっては、直接指摘されるよりもむしろダメージがあって、意地悪なやり方ですが読者としてはスッキリしました。
久保先生の語ったことの中で、一番重要なのが「評判」という言葉も非常に興味深かったです。
結局、人と人との関係は法律では決められないような部分で、人に嫌がらせをしない・意地悪をしないとか、目に見えない評判みたいなところが大事だったりするんですよね。
俺たちの人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ
「そうだよ、永遠。バスケの最後の一分が永遠なんだから、俺たちの人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ」
本:『逆ソクラテス』 より
小学校6年生のミニバス最後の試合、試合終了まで残り1分の場面。
コーチの磯憲は、バスケの世界では残り時間1分を「永遠」と呼ぶことを教えてくれた。
上記は、拳銃を持って襲ってきた犯人を捕まえた後に、犯人に対して「永遠」について伝え、今からでも更生することが出来ると説いた言葉。
普通だったら犯人に対しての怒りが先行する場面で、犯人のことを想った発言ができるのはすごいですよね。
これは、過去の磯憲からのアドバイス故の言葉だと思いますが、確かに、ずっと牢屋に入っているわけではない犯人で、今後社会に出てくることを考えると良い発言だったと感じます。
暗闇に迷い込んで、極限まで追い込まれ、そうせざる負えない犯人の精神状態を考えると同情の気持ちも生まれてきます。
加害者側の気持ちを考える機会を与えてくれた、ちょっとだけほっこりする名言です。
最終的には、真面目で約束を守る人間が勝つんだよ
「地味でもいいじゃないの。やっぱり、最終的には、真面目で約束を守る人間が勝つんだよ」
本:『逆ソクラテス』 より
謙介の母親は、真面目で約束を守る人間が幸せになれると信じている。
そういう話をする時は、いつもワシントン大統領が桜の木を切ったことを正直に話して褒められた逸話を例に出して、 謙介に言い聞かせていた。
ワシントン大統領の逸話は、この短編の中で非常に重要で、物語のキーになる伏線の役割を果たしています。
真面目で約束を守ることって簡単なようで案外難しくて、現実世界では少しずる賢い人が得をすることが多いように思います。
しかし、長期的な人間関係で見れば真面目で約束を守る人が信頼され、最終的には幸せになれると、希望も込めてそうであれば良いなと思っています。
伊坂幸太郎さんの作品は、会話にユーモアがあり読んでいてとても面白くて、皮肉を込めた言い回しは少しひねくれているのかな?と思うこともありますが、最終的な救いとか道徳的な正しさみたいなものが物語に含まれている所は、読み終わった後の爽快感や読んで良かったなという気持ちにさせてくれて、個人的には本当に大好きな作家さんの一人です。
恐るべき児童、噂のドローン少年たちに何かやられたの?
「あなたも被害者?この悪い子供たち、恐るべき児童、噂のドローン少年たちに何かやられたの?」
本:『逆ソクラテス』 より
靖はドローンの操作を誤って、予期せぬ場所に飛ばしてしまったため、原付バイクで通り掛かったおじさんに絡まれることになった。
上記は、事態を収拾するために、謙介のお母さんがおじさんに対して言った言葉。
私は、この場面を読んだ時に、思わず声を出して笑ってしまいました。
"恐るべき児童、噂のドローン少年"って(笑)。
謙介のお母さんの独特な言葉のチョイスは秀逸で、絶妙なわざとらしさが面白くて、この言葉は残しておきたいと思ったので、名言として挙げさせてもらいました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎
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