本:『傲慢と善良』を紹介します!
今回は、【傲慢と善良の名言8選と感想・あらすじ】を、本:『傲慢と善良』を基に紹介します。
※本記事にはネタバレが含まれていますので注意してください。
目次
本:『傲慢と善良』とは?
2018年に「かがみの孤城」で本屋大賞を受賞したことでも知られる、辻村深月さんの長編小説です。
本書は、婚約者の真美が突如として姿を消す場面から始まります。
真美を必死で探す架ですが、徐々に今まで知らなかった真美の秘密や、自身も体験してきた婚活の闇と言えるようなもやもやと向き合っていくことになります。
婚活が上手くいかない人は、「傲慢と善良」に理由がある。
本のタイトルにもなっている「傲慢と善良」は、本文中でも重要なキーワードになっています。
今まで知らなかった真美の秘密とは?架は真美を見つけることはできるのか?「傲慢と善良」とは?
辻村美月さんは心理描写がとても巧みで、読んでいる内にどんどんと話の中に引き込まれていきます。
少し長いですが、とても読みやすいので特に婚活中の方にはおすすめです。
名言8選と感想
そんなふうに思うこと自体が傲慢であり、間違いだった
特別でない、と思っていた恋人だった。けれど、そもそもそんなふうに思うこと自体が傲慢であり、間違いだった。
本:『傲慢と善良』 より
架が、過去に恋人だった「アユ」について回想している場面。
アユは明るく社交的で、架の父親が亡くなった時にも寄り添ってくれた優しい女性だったが、彼女の結婚したいという気持ちにすぐに答えることができず、結局アユから別れを切り出されてしまった。
いつかは結婚するんだろうとぼんやり考えていた架でしたが、そのいつかをアユに押し付けていたのは架の傲慢であり、思い上がりだったということに、アユと別れてから気付かされました。
ビジョンのある人
「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」
本:『傲慢と善良』 より
架は失踪した真美の手掛かりを掴むために、真美がかつて利用していた結婚相談所を運営する小野里に会いにいった。
架は、「婚活がうまくいく人とうまくいかない人の差」を小野里に尋ね、それに答えたのが上記の言葉。
「ビジョンのある人」との返答に、架は思わずアユのことを思い出しました。
アユには、架と付き合っていた時から、結婚の先に出産やその後の生活のビジョンが見えていましたが、架にはそれがありませんでした。
必ずしも若い頃から将来のビジョンを持っていて、早く結婚することが正解ではありませんが、自分の意思が無く親に言われるままに婚活をしていた真美と、いつかは結婚するんだろうと何となく考えていた架が後悔している姿を見ると、小野里の言う「ビジョン」を持つことが婚活では大事だということが分かりますね。
自己愛の方はとても強いんです。
「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。──高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが摑みたいだけなのに、なぜ、と。親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない。真実さんもそうだったのではないかしら」
本:『傲慢と善良』 より
小野里は、現代人の婚活がうまくいかない理由の1つに「傲慢と善良」があると語っている。
善良に生きている人は親の言いつけを守り、自分で何も決めずに、自分が無いまま大人になる。
一方、情報が溢れている今の時代、自分の価値観を重視し過ぎて、何も決められないのにプライドだけは高い人を生み出し続けている。
自分から動くこともしないのに、プライドだけは高いなんてことになれば、結婚なんてできないですよね。
ピンとこない、の正体
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です」
本:『傲慢と善良』 より
架が婚活をしていた時にたびたび感じていた「ピンとこない」について、小野里が語っている場面。
相手が自分と釣り合わなければ、「自分の価値はこんなに低くない。もっと自分にふさわしい人がいる」と感じ、無意識に自分と相手を点数化して比べている感覚が「ピンとこない」である。
小野里は平気な顔をして恐ろしいことを言っていますが、確かに100点や120点の相手であれば、すぐに結婚したい「ピンとくる相手」になるのかもしれませんね。
小野里の言葉はどれも確信をついた納得させられるもので、もっと名言として挙げても良かったのですが、小野里の名言集になってしまいそうだったので、とりあえず3つとさせてもらいました。
生きてくために必要な悪意や打算の方は誰も教えてくれない
「箱入り娘って言葉があるけど、真実の場合もそうだったのかもね。うちは、そんなたいそうな家じゃないけど。だけど、真面目でいい子の価値観は家で教えられても、生きてくために必要な悪意や打算の方は誰も教えてくれない」
本:『傲慢と善良』 より
架は真美の手掛かりを掴むために、義姉の希望に話を聞いている場面。
真美は子どもの頃からずっと善良で、悪く言えば馬鹿正直で、他人を出し抜くために必要な悪意や打算を知らず、そのことでたびたび損をすることもあったという。
世間ではよく言われる善良ですが、そのことで生きづらかったり、婚活で上手くいかないとは、なんとも皮肉なことですよね。
自分がいることに何か意味があるなんて
嬉しかった。自分がここに来たこと、自分がいることに何か意味があるなんて、これまで、誰からも言ってもらったことがなかった。
本:『傲慢と善良』 より
真美はボランティアをするために単身で仙台に行き、写真の洗浄作業と地図作りを行った。
上記は、地図作りのため町を歩いている際に、洗浄作業を行った写真と同じ場所を偶然発見し、写真を届けたことに感謝された場面。
今まで、ほとんど親に言われるまま善良に、流されるように生きてきた真美でしたが、初めて誰かの役に立つことができて、自分がいることの意味を見出して胸が熱くなりました。
真美が単身でボランティアをしたことは、これまでの家族や架、周囲との関係や、自分自身について考えさせられる良い機会になり、架と正面から向き合う決意ができたという意味でも、とても良い時間だったと感じます。
相手が、明日も待ってでけると思うのは、図々しいっちゃ。
「相手が、明日も待ってでけると思うのは、図々しいっちゃ。急にそれができなぐなった人だぢ、わたしもうんと、見できたがら」
本:『傲慢と善良』 より
上記は、真美が架との関係を石母田たちに話した後に、石母田から言われた言葉。
仙台で震災を経験した石母田だからこそ言える、とても深くて重い言葉です。
真美は、石母田たちに全てを包み隠さず話して「自業自得」と思われると覚悟していましたが、全くそんなことは無くて、架と会うために後押しをしてくれました。
このことで真美は架と再び会う決意をすることができました。
石母田さんかっこよすぎます。
架に摑まれたその手を、自分の意思で、真実もまた強く握り返した。
「真実」 架に呼ばれ、手を引かれる。手をつなぎ、正面を向く。そこにまた、カメラのフラッシュが光る。 架に摑まれたその手を、自分の意思で、真実もまた強く握り返した。
本:『傲慢と善良』 より
仙台の真美が見つけた神社で架と結婚式を挙げることができた場面。
途中どうなることかと思いましたが、最後の最後にハッピーエンドで良かったですね。本当にほっとしました。
でも、真美と架がたくさん迷って、遠回りして決断した結婚にはとても意味があると思います。
普通にすんなりと結婚していては、決してできない経験をすることができて、今までよりも踏み込んだ関係になれましたよね。
本記事で紹介しきれなかった名言がたくさんありますので、興味がある方は本の方も読んでみて下さいね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎
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