【名言6選と感想・あらすじ】小説:ラブカは静かに弓を持つ※ネタバレあり(安壇美緒)

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ハナハナ
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本:『ラブカは静かに弓を持つ』を紹介します!

今回は、【ラブカは静かに弓を持つの名言6選と感想・あらすじ】を、本:『ラブカは静かに弓を持つ』を基に紹介します。

※本記事にはネタバレが含まれていますので注意してください。

この記事は、こんな人にオススメ!

・『ラブカは静かに弓を持つ』の名言、感想、あらすじを知りたい

・『ラブカは静かに弓を持つ』が好き

・ハナハナのオススメ本を知りたい

本:『ラブカは静かに弓を持つ』とは?

2023年に本屋大賞2位に輝いた安壇美緒さんの小説です。

主人公の橘は、音楽の著作権を管理する団体の職員です。

ある時、上司からの命令で音楽教室に一般客を装って潜入調査することになりました。

当初は仕事と割り切っていた橘でしたが、講師の浅葉や生徒たちと交流を深めるにつれて、橘の思いは揺らいでいきます。

橘の潜入調査の行方は?橘が抱えるトラウマとは?

本を読んでいると、まるでチェロの曲が聞こえてくるようで、演奏シーンもこの本の魅力の一つになっています。

ハナハナおすすめの一冊です。

名言6選と感想

早朝の雨を思わせる柔らかな旋律が、静かに心へ着地する。

見知らぬ外国の塔の上から降ってくるかのような美しい音色が、閉じ切った魂の外縁を撫でていた。早朝の雨を思わせる柔らかな旋律が、静かに心へ着地する。その中心に辿り着けるのはもう、音楽しかない。

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

橘は過去のトラウマによる不眠と夏の猛暑によって体力を奪われ、潜入先のミカサ音楽教室に到着した時には熱中症の症状で動けなくなってしまった。

チェロ講師の浅葉は、橘を癒すために小野瀬晃の「雨の日の迷路」を演奏した。

長らく不眠に悩まされていた橘だったが、浅葉の清らかなチェロの音色に癒され久しぶりの休息をとることができた。

過去の事件からチェロを辞めた橘ですが、自身を苦しめるトラウマから一瞬でも解放してくれたのもチェロというのは皮肉なことですね。

深海の悪夢から逃げ切れるかもしれないと感じた橘は、これから一層チェロのレッスンに励むようになります。

チェロの演奏を文字として伝えるのはとても難しいと思いますが、この場面では浅葉先生の素晴らしい演奏の様子を、まるで実際にその場で聞いているような感覚にさせてくれます。

本文中に何度もチェロの演奏シーンが出てきますが、どのシーンでも生き生きとした演奏の描写があり、それらを楽しむことができるのもこの本の魅力の一つになっています。

「醜い魚の名前だよ。ラブカっていう深海魚」

「あの、ラブカってなんですか?」 いつにない調子で言葉を遮った橘を、浅葉は少しだけ物珍しげに見返した。 飴色のチェロはその胸に抱かれて、奏でられる瞬間を待っていた。「醜い魚の名前だよ。ラブカっていう深海魚」

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

橘は、音楽教室の発表会で演奏する曲が「戦慄きのラブカ」に決まったと浅葉から伝えられた。

上記は、橘がラブカについて浅葉に尋ねている場面です。

「戦慄きのラブカ」は、昔のスパイ映画の劇伴として使用されている曲で、映画の内容は諜報機関に所属している孤独なスパイが、敵国で自分の居場所を探す物語です。

それを聞いた橘は、自分の潜入調査が浅葉にばれているのではないかと考え、思わず呼吸が止まってしまうほどでした。

橘の立場とあまりにも似ていて、偶然の一致だとしたらゾッとしますね。

本のタイトルにもなっている「ラブカ」はとても醜いと言われている深海魚で、妊娠期間が世界最長の3年半もあり非常に慎重な生き物(=スパイの隠語)として知られています。

自分のチェロを背負っても、ちゃんと家に帰れるよ

「橘君は、もう大人だ。背だって俺よりずっとでかいし、もう誘拐なんてされたりしない。誰も楽器を壊しはしないし、君のことだって探さない。自分のチェロを背負っても、ちゃんと家に帰れるよ」

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

橘は過去の誘拐事件と自分の楽器を持つ怖さについて浅葉にカミングアウトした。

上記は、それを聞いた浅葉が橘に伝えた言葉です。

浅葉の優しい人柄が伝わってくる言葉ですね。

この言葉を受けて、橘はトラウマから抜け出す一歩を踏み出すことになります。

「俺がなんとかしますよ、先生」

「コンクール」「うん?」「俺がなんとかしますよ、先生」

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

浅葉は世界的奏者の言葉を受け、自身の年齢からすると最後のチャンスである全日本音楽コンクールに出場することを決めた。

橘は、浅葉が証人尋問に出廷することになってしまった場合、浅葉のコンクールに悪影響がでてしまうと考え、それだけは何としてでも阻止しようと決意した。

潜入調査の名目でミカサ音楽教室に通っていた橘でしたが、徐々に浅葉との間に信頼関係が構築され、自身の立場よりも浅葉のコンクールを優先しようと考えました。

橘にとって浅葉は自身のトラウマを初めて打ち明けた相手で、トラウマと正面切って向き合うという意味でも、全著連と戦う決意が感じられる場面です。

信用してくれてありがとうございます

「……よく話してくれましたね。信用してくれてありがとうございます」

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

橘は不眠症のため心療内科に通っていたが、それは薬をもらうための事務的な作業のようなもので、医師のことを本心では信用していなかった。

上記は、不眠の原因と考えられる過去のトラウマについて初めて医師に打ち明けた後に、医師から言われた言葉です。

他人を信じることを恐れていた橘が、誰かを頼ってもいいんだと思わせてくれたのは浅葉です。

ただの業務命令だった音楽教室への潜入調査でしたが、浅葉との出会いによって、橘に人を信じることを思い出させてくれたんですね。

橘の前に立ちふさがっていた壁が、少しずつ取り除かれていくことがわかる感動的な場面です。

俺にとっての師匠もまた、浅葉先生だけ

「先生にとっての師匠がその人ひとりであるように、俺にとっての師匠もまた、浅葉先生だけなんだということを、想像していただけますでしょうか……」

本: 『ラブカは静かに弓を持つ』より

橘は業務命令といえど、結果として浅葉やミカサ音楽教室の仲間を裏切ってしまった。

上記は、そのけじめを付けて、再び浅葉のチェロ教室に戻ってきた橘が浅葉に言った言葉です。

教室に通い始めた当初に、浅葉にイマジネーションがあると言われ、裏切りがばれた時にイマジネーションが無いと言われました。

それらをやり返すような上記の言葉に、私はニヤニヤが止まりませんでした。

浅葉に潜入調査がばれた後は、上記のようなやり取りがまたできるようになるとは想像していなかったので、最後の最後にホッとしました。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎

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