【名言10選と感想・あらすじ】小説:スモールワールズ※ネタバレあり(一穂ミチ)

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ハナハナ
ハナハナ

本:『スモールワールズ』を紹介します!

今回は、【スモールワールズの名言10選と感想・あらすじ】を、本:『スモールワールズ』を基に紹介します。

※本記事にはネタバレが含まれていますので注意してください。

この記事は、こんな人にオススメ!

・本:『スモールワールズ』の名言、感想、あらすじを知りたい

・『スモールワールズ』が好き

・ハナハナのオススメ本を知りたい

本:『スモールワールズ』とは?

2022年の本屋大賞にノミネートされた一穂ミチさんの短編集です。

6つの短編から構成されており、1話が50ページ程度で、忙しい方でも気軽に読むことができます。

どのお話も、登場人物たちの心理描写が繊細に描かれており、読み進めていくうちに共感したり、引き込まれていく内容となっています。

クスッと笑える話や、泣ける話、考えさせられる話など、この一冊で様々な楽しみ方ができる本です。

ハナハナおすすめの一冊です。

名言10選と感想・あらすじ

①ネオンテトラ

主人公の美和は30歳。結婚から8年が経過していた。

過去に2度流産しており現在も不妊に悩んでいる。

夫がケータイで若い女性と頻繁に連絡を取っていることを知り、浮気を疑っていた。

モデルの仕事をしていたが、最近世代交代の名目で卒業を言い渡され、公私共に不満や悩みが溜まっていた。

そんなある時、向かいのマンションで、少年が男性に尋常では無い勢いで怒鳴られているのを見かけた。

その少年と偶然コンビニで遭遇して以降、少年との奇妙な関係が始まる・・・。

わたしの卵ではうまくいかない・・

けれど、仮に彼と交わっても、きっとわたしの卵ではうまくいかない──だったら有紗に産んでもらえばいい。

本:『スモールワールズ』より

コンビニで定期的に少年と交流していた美和は、少年に愛着を抱き少年の子どもが欲しいと思うようになる。

しかし、不育症の自分では子どもを産むことが難しいため、少年との情事があった有紗に産んでもらうため、美和は以前より頻繁に家を空けるようになった。

私は、初めてこの文章を読んだ時に、美和は恐ろしい女だと思いました。

美和が飼育しているネオンテトラには、産卵用の水槽が必要という所からの発想ですが、未成年の姪に子どもを産ませるという発想には正直ゾッとしました。

物語の終わりも中々トリッキーで、展開を予想するのが難しいお話でした。

②魔王の帰還

主人公の鉄ニは、野球推薦で入学した高校で暴力事件を起こし、現在通う高校に転校してきた。

身長183センチの体格と金髪にピアスという容貌で周囲から避けられ、授業中は居眠りをして過ごすなど、「非生産的」な高校生活を過ごしていた。

そんなある時、嫁いで家を出たはずの姉が突然実家に戻ってきた。

姉は、身長が188センチあり総合格闘技のスカウトを受ける程の体格を持ち、岡山弁を使いこなす豪快な性格で、鉄ニにとっては恐れの対象だった。

徹ニは、鉄ニのことを唯一恐れないクラスメイトの少女と親しくなり、成り行きで鉄ニと姉、少女の3人で金魚すくい大会に出場することになる。

姉が突然戻ってきた理由とは?金魚すくい大会の結果は?鉄ニとクラスメイトの恋の行方は?

登場人物が個性的で、物語のテンポも良く、スモールワールズの中で私が最も好きなお話です。

前世は剣闘士、あだ名は魔王

占い師によると前世は古代ローマの剣闘士、名前は真央だがあだ名は「魔王」。そんな規格外の姉が、出戻ってきた。

本:『スモールワールズ』より

前世は古代ローマの剣闘士で、あだ名は「魔王」という、かなり前衛的なキャッチコピーを持っているお姉さんです。

一見豪快でガサツなお姉さんですが、実は繊細で心優しい性格に、私は一発でファンになってしまいました。

勇者のもとへ、音を立てて帰れ、魔王

奇跡は起こらない、起こらないから傍にいてやれ。最後には負けが決まってるシナリオでも、立ちはだかるから魔王なんだろ。 勇者のもとへ、音を立てて帰れ、魔王。

本:『スモールワールズ』より

お姉さんが実家に戻ってきた理由を知った鉄ニが、彼女を励ます気持ちで心の中でエールを送った場面。

どうにもできない現実に直面したお姉さんが、前を向いて進もうとしている場面は、読み手を励ましているようでもあり、かなり泣けます。

③ピクニック

一人暮らしの希和子は、数日間孫を預かることになった。

ベランダの洗濯物を取り込むため少し目を離した隙に、孫は仰向けのまま動かなくなり、そのまま亡くなってしまった。

警察の取り調べにより、過去に希和子の子供が家で不審死したことが分かり、希和子に疑いの目が向けられるようになる。

孫が亡くなった真実は?希和子はどうなってしまうのか?最後までハラハラする展開です。

「ママ、いいこ、いいこ」

─瑛里ちゃんが枕元に駆け寄って「ママ、いいこ、いいこ」ってにこにこしながら頭を撫でたの。そうしたら、希和子の目にすうっと生気が戻って、泣きながら瑛里ちゃんを抱きしめてた。

本:『スモールワールズ』より

上記は、過去に希和子の娘が亡くなった時の回想シーンです。

当時の希和子は、廃人のように何も聞こえず、何も見えておらず、一見すると別人のようになってしまいました。

そんな時、娘の瑛里が「ママいいこいいこ」と頭を撫でると、希和子は正気を取り戻しました。

希和子の虐待が疑われ、序盤からどんよりとした空気でお話が進んでいましたが、一筋の希望が見えたような象徴的な場面です。

真実とお母さんを、絶対にふたりきりにしないで。

真実とお母さんを、絶対にふたりきりにしないで。お母さんの中に眠っているものを二度と起こさないようにして。お願い。わたしを信じて。 早く。

本:『スモールワールズ』より

物語の最後に、全ての真実が明かされた場面です。

個人的には正直知りたくなかった、知らないままで終わって欲しかった悲しい真実。

真実は、必ずしも知らない方が良いこともあると思い知らされた場面です。

④花うた

主人公:深雪の兄は、若者に突き飛ばされて亡くなった。

そして、あるきっかけから、刑務所に収容されている加害者の若者と手紙のやり取りをすることになった。

最初は、兄を殺した若者を責める手紙を送っていたが、手紙のやり取りが進んでいくと、次第に若者に対して親しみを持つようになる。

ある時、刑務所の若者に事件が起きて・・・。

罪と罰、反省と償い、赦しとは?

事件の加害者・被害者、両方の視点から考えさせられる内容です。

最後はめちゃくちゃ泣けます。

そんな「はんせい」がほしかったんじゃない。 

そんな「はんせい」がほしかったんじゃない。 バカヤロウ。

本:『スモールワールズ』より

深雪が、若者に「パズルの話」について1つの答えを教えた。

その後の手紙で若者から「ごめんなさい」と言われた事に対しての深雪の言葉。

深雪は「被害者の家族」と「加害者」という関係だけでは無く、本当の意味で若者と向き合おうと踏み出しました。

しかし、その矢先に若者に起こった出来事は、深雪にとって予想外であり、どこにもぶつけられないむなしい怒りが表現されている場面です。

小さな桜のハンコ

本物の桜も好きだけど、わたしがいちばん見たいのは、あなたからの手紙の隅っこにいつも咲いていた小さな桜のハンコです

本:『スモールワールズ』より

若者からの手紙は、3年前に受け取ったのが最後だった。

今まで、深雪にとって唯一の家族・支えだった兄が亡くなり、若者がその代わりのような存在になっていたのではないかと推測します。

加害者からの手紙を待ち望んでいるというのは、構図としては少し奇妙に感じます。

しかし、深雪の若者への想いは本物で、なんとも切ない場面となっています。

⑤愛を適量

主人公の慎吾は中年の高校教師で、過去に起こした事件から怠惰で無気力な生活を送っていた。

そんなある日、娘の「霞」を名乗る男が慎吾の自宅を突然訪問してきて、流れから慎吾の家に一緒に住むことになった。

慎吾は15年ほど前に離婚しており、霞という娘は存在していたが、目の前の見知らぬ男に混乱していた。

「霞」の正体とは?過去に慎吾が起こした事件とは?

今の時代を反映したテーマもあり、最後には納得できる結末の面白いお話です。

理由とか原因を他人に紐づけてると人生は不自由に

理由とか原因を他人に紐づけてると人生がどんどん不自由になる

本:『スモールワールズ』より

慎吾は霞のアドバイスを受け、髪のセットをするなど身なりを整えて学校に行ったところ、女子生徒数人から笑われてしまいました。

上記は、その話を聞いた霞の言葉です。

自身の「性」に悩む霞が、長い間本当の自分と向き合ってきたからこと言えた深い言葉だと感じます。

そうか。適量じゃなくてもいい時がある。

そうか。適量じゃなくてもいい時がある。叶うことのない願いや祈りなら溢れても大丈夫だった。そして叶わない願いが無力だとは限らない。

本:『スモールワールズ』より

物語のメインテーマである「愛を適量」について、慎吾自身の結論が出てスッキリとした場面です。

本当のところ、適量の愛なんで誰にもわからないし、正解は誰にもわからない。

でも、愛する人が幸せになるための願いや祈りがとても尊いということは、確かなことなんだと思います。

⑥式日

高校時代の後輩から、突然父親の葬式へ参列して欲しいとの誘いがあった。

主人公は、葬式に参列した経験が無かったため、好奇心から後輩の誘いに乗ることにした。

物語が進むにつれて徐々に明らかになる後輩の過去と、終盤の複線回収には驚かされます。

好かれたら始まっちゃうから、そっちのが怖いよ

「嫌われたらそこで終わりじゃん。好かれたら始まっちゃうから、そっちのが怖いよ」

本:『スモールワールズ』より

後輩が、過去に主人公にカミングアウトしたことについて語った言葉です。

・「好かれたら始まっちゃう」から大変。

・「嫌われたらそこで終わり」だから楽。

後輩の言っていることも少し分かるようは気もしますが、結局のところ人間関係ってそういうものなんだと思います。

他人と付き合っていけば、楽しいこともありますが、それと同じくらい面倒なことも出てくる。

『スモールワールズ』全体に共通することですが、最終的には自分がどう感じて、納得した上で自分自身で決めることが大事なんだと感じました。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎

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