シリコンの偏析について解説します!
今回は、「シリコンの偏析」について解説していきます。
シリコンの偏析について全く知らない方、異分野から半導体製造工程に関わることになった方など、初心者向けの記事になります。
シリコンの偏析とは?
この記事では、半導体の製造工程におけるシリコンの偏析について解説していきます。
まずは、一般にはあまり聞かない「偏析」という言葉について紹介します。
偏析とは、簡単に言うと合金の内部で濃度に偏りがある状態です。
合金の一部分で、ある物質の濃度が異常に高いなど、合金の場所によって、濃度の分布にバラツキが出ることがあります。
半導体素子に広く使われているシリコンでも、偏析が起こります。
シリコンの偏析が大きいと、完成した半導体素子の出来栄えのバラツキが大きくなってしまいます。
ちなみに、半導体製造工程における偏析とは、n型半導体やp型半導体を生成する際に、添加物として加えるリンやボロンなどとシリコンとの合金を指すことが多いです。
偏析の度合いは、シリコンインゴット(シリコンの塊)の製造方法の違いに大きく左右されます。
シリコンインゴットの製造方法についは、以下の記事で解説しています。
次章では、シリコンインゴットの製造方法別の偏析の考え方について解説していきます。
製造方法別の偏析の考え方
チョクラルスキー( CZ)法
シリコンインゴットの製造方法は、大きく分けてチョクラルスキー( CZ)法と、フローティングゾーン( FZ)法の2つです。
チョクラルスキー( CZ)法は、シリコンの種結晶を多結晶シリコンを溶融させた液に浸し、種結晶を成長させていき、ゆっくり引き上げてインゴットを製造する方法です。
シリコンに加える添加物は、多結晶シリコンの溶融液に混ぜ込みます。
添加物の入ったシリコン溶融液は、添加物の濃度が低い状態から徐々に固化していき、シリコン溶融液の添加物濃度はどんどん高まっていきます。
固化が進むにつれて、固化する部分のシリコン溶融液の添加物濃度が高くなり、添加物の濃度に偏りが生じます。
上記のように、シリコン溶融液に添加物を全て溶融するチョクラルスキー( CZ)法は、偏析が大きい製造方法と言えます。
フローティングゾーン( FZ)法
続いては、フローティングゾーン( FZ)法です。
フローティングゾーン( FZ)とは、種結晶の上に棒状の多結晶シリコンを吊るすように配置し、種結晶に近い位置の多結晶シリコンを加熱、溶融して、種結晶を成長させていき、インゴットを製造する方法です。
フローティングゾーン( FZ)法で、シリコンに添加物を加える方法は2つあります。
単結晶化する部分にガス状の不純物を添加するガスドープ法と、単結晶化する部分に中性子線を照射して、シリコンを核反応により添加物とする方法です。
どちらの方法も、単結晶化する部分に直接添加物を加えるため、合金の濃度のバラツキは生じにくいです。
現状では、チョクラルスキー( CZ)法よりも、フローティングゾーン( FZ)で製造した半導体素子の方が、偏析は少なく品質も良いです。
ただし、フローティングゾーン( FZ)はコストが高く、大口径化出来ないため、生産の割合としては、CZ法が95%、FZ法が5%となっています。
半導体素子に求められる品質や用途によって、製造方法を使い分けることが必要です。
以上、シリコンの偏析についての説明でした。
参考になった半導体関連本
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