イオン注入後のアニールについて解説します!
今回は、「イオン注入後のアニール(熱処理)とは?」について解説していきます。
半導体のイオン注入後のアニールついて全く知らない方、異分野から半導体製造工程に関わることになった方など、初心者向けの記事になります。
目次
イオン注入後の熱処理(アニール)解説
半導体のイオン注入法とは?
イオン注入後の熱処理(アニール)について解説する前に、まずは半導体のイオン注入法について簡単に説明します。
n型半導体やp型半導体を作るために、シリコンウェハにイオン化された不純物を注入します。
注入されたばかりの不純物は、結晶構造に並ばず不活性のため、結晶格子を整えるための熱処理(アニール)が必要になります。
半導体のイオン注入法については、以下の記事でも解説していますので参照下さい。
それでは、次項ではイオン注入後の熱処理(アニール)について解説します。
イオン注入後の熱処理(アニール)とは?
イオン注入後のアニールは、上の図のようなイメージです。
注入された不純物イオンは、シリコンの結晶構造を破壊して、無理矢理に結晶構造内に存在しています。
この状態は、単結晶では無くシリコンと不純物イオンが混ざっているだけで、p型半導体やn型半導体としては機能しません。
イオン注入後の半導体に熱を加えることで、不純物イオンが結晶構造内で移動して、シリコンの格子点に収まります(個相拡散)。
半導体に熱が加わると、結晶構造内の移動しやすさが上昇するため、結晶欠陥の修復が行われるのです。
熱処理(アニール)の温度としては、通常550 ~ 1100 ℃の間で行われます。
シリコンの融点は1400℃ですので、それに比べると低い温度なのが分かると思います。
熱処理には、大きく分けて3つの方法があります。
次章では、それぞれの特徴について解説していきます。
イオン注入後の熱処理(アニール)3つの方法とは?
①炉心管方式
まずは、炉心管方式です。
炉心管方式とは、上の図のように炉(ホットウォール)の中に大量のウェハをセットして、ヒーターで加熱する方法です。
一度に大量のウェハを処理することが出来ますが、ウェハを一気に高温にすることはできないため、処理に数時間を要します。
また、炉内部で温度のバラツキがあり、ウェハをセットする位置によって熱処理の度合いが変わってきます。
特に、最下部と最上部の温度バラツキが大きいため、上の図のようにダミーウェハをセットします。
ダミーウェハは、実際に製品としては使用しませんが、ダミーウェハを入れることによって、装置内の熱容量のバランスが取れ、他ウェハの温度バラツキが少なくなります。
②RTP
続いてはRTPです。
RTPはRapid Thermal Processingの略称で、急速熱処理と呼ばれています。
上の図のように、シリコンウェハに管状ランプなどの赤外線(800 nm以上の波長)を当てて、加熱処理します。
炉心管方式と違い、ウェハ一枚一枚を処理していきます。
シリコンは、赤外線を吸収しやすい性質を持っています。
ウェハ一枚あたり、約1分程度で処理することができ、処理能力が非常に高いのが特徴です。
実際の加熱時間は10秒程度で、残りの50秒はセットや温度の昇降温時間です。
2010年辺りでは、炉型が9割に対してRTPが1割程度でしたが、現在ではRTPも多く使われるようになってきており、RTPが主流になってきています。
③レーザーアニール法
最後に紹介するのは、レーザーアニール法です。
レーザーアニール法とは、ウェハにレーザー光を照射して、加熱溶融の処理をする方法です。
RTPはウェハ全体を加熱しますが、レーザーアニール法では、ウェハ表面のレーザー光を照射した部分のみを加熱し、溶融まで行います。
レーザーアニール法では、溶融部に不純物ガスを吹き付けて再結晶化することで、ウェハ表面のみに不純物を導入することが出来ます。
このように、ウェハ表面のみに不純物を導入することを、極浅(ごくあさ)接合と呼びます。
半導体素子は微細化が進んでおり、今後の極浅接合の活用が期待されています。
以上、イオン注入後のアニール(熱処理)についての説明でした。
参考になった半導体関連本
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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