本:『52ヘルツのクジラたち』を紹介します!
今回は、【52ヘルツのクジラたちの名言10選と感想・あらすじ】を、本:『52ヘルツのクジラたち』を基に紹介します。
目次
本:『52ヘルツのクジラたち』とは?
2021年に本屋大賞を受賞した、町田そのこさんの小説です。
52ヘルツのクジラとは、他のクジラとは鳴き声の周波数が違う、近くにいても決して交わる事のできない孤独なクジラです。
今まで家族に搾取されてきた主人公の貴瑚が、「ムシ」と呼ばれて虐待を受けている少年と出会います。
貴瑚は、どのようにして少年を救い出すのか、52ヘルツのクジラが、物語にどのように関わってくるのか。
本文中に、本当に腹が立つ嫌味な人物が出てきますが、それを超えるくらい心優しい仲間も多く登場し、最後まで読み進めれば絶対に「読んで良かった」と思うはずです。
ハナハナおすすめの一冊です。
52ヘルツのクジラたちの名言10選と感想
52との出会い
「助けて、アンさん」 食いしばった歯の隙間から絞り出すように言うと、ぴたりと雨が止んだ。驚いて顔を上げると目の前にジーンズを穿いた足が伸びていて、もっと見上げると、飛んでいったはずのわたしの傘を差した女の子がいた。
本:『52ヘルツのクジラたち』より
コンドウマートで買い物をしていた貴瑚は、知らないおばあさんからの「突撃」を受けて、逃げるように店から出た。
雨は強くなり、強風で傘は飛び、全てがどうでも良いと思っていたら、腹部に猛烈な痛みが襲ってきた。
ここにはいないアンさんに助けを求めると、突如として雨が止んだ。
よく見ると、以前見かけた女の子が貴瑚に傘を差し出してくれていた。
物語のキーパーソンとなる「52」と初めてコンタクトを取った印象的なシーンです。
誰にも、憐れまれてはならない
もう二度と、このひとにも誰にも、憐れまれてはならない。それからわたしは、大人を常に警戒するようになった。
本:『52ヘルツのクジラたち』より
貴瑚が小学4年生の時、担任との三者面談で、貴瑚の服にアイロンが掛かっていないことを母親が指摘された。
母親が弟を溺愛していて、連れ子である貴瑚に愛情が注がれていないのを、担任が遠回しに指摘した形だ。
面談が終わって帰宅した直後、母親は激怒して貴瑚を殴り、トイレに隔離されて食事を十分に与えないなど、虐待はエスカレートしていった。
悪いのは母親ですが、担任の中途半端な優しさによって、貴瑚は苦しむことになりました。
以前紹介させてもらった、本:『流浪の月』でも、中途半端な優しさに苦しむ被害者のお話が出てきました。
とても難しい問題ですが、中途半端な気持ちで手を出すと、逆に傷付ける可能性があることは、覚えておく必要がありそうですね。
『恩』では無く『呪い』
死ぬくらい追い詰めてくるものはもう『恩』とは呼べないんだよ。それは『呪い』というんだ
本:『52ヘルツのクジラたち』より
義父の介護に疲れ果てた貴瑚が、家を出てアンさんに出会い、言われた言葉。
今まで育ててきた恩を盾にして、奴隷のような介護生活を強いる母親。
死を考えるほどに追い詰められているのは、恩では無くて呪いである。
個人的には、恩は他人に強いるものではなくて、受けた方が自発的に感じるものだと思います。
恩の呪いは強く、使い方によっては恐ろしいですね。
うるさい口を閉じろよ、おばさん
「いい加減そのうるさい口を閉じろよ、おばさん」
本:『52ヘルツのクジラたち』より
アンさんが、言い訳を続ける貴瑚の母親に対して放った言葉。
今まで散々酷いことをされてきたのに、母親に対する恐怖と情から、いまいち吹っ切れない貴瑚。
アンさんの言葉は、そんなどっちつかずの貴瑚が、前を向いて歩んでいくキッカケになりました。
私も、最初にこの言葉を聞いた時はスッキリして、一発でアンさんのファンになってしまいました。
お母さんが大好きだった
「わたし、お母さんが大好きだった。大好きで大好きで、だからいつも……いつも愛して欲しかった」
本:『52ヘルツのクジラたち』より
子は親を選べなくて、どんなに酷いことをされても、貴瑚にとっては大好きなお母さんだった。
貴瑚は本当に良い子なのに、こんなことを言わせるなんて、最低な母親ですよね。
私にも2歳と4歳の子供がいますが、貴瑚の母親の考えは理解できませんし、理解したいとも思いません。
この言葉を聞いて、改めて子供にとっての愛情の大切さを認識させられました。
『52ヘルツのクジラの声』
『これ、聴きな』『なに』 『52ヘルツのクジラの声』
本:『52ヘルツのクジラたち』より
貴瑚とルームシェアをしていた美音子ちゃんが、52ヘルツのクジラについて教えてくれた場面。
美音子ちゃんは口数が少なく、お互いに深く干渉することは無かったが、貴瑚が苦しい時にはそっと缶ビールを転がしてくれるなど、さりげない優しさに貴瑚は救われていた。
美音子ちゃんから教えてもらった52ヘルツのクジラの声に、貴瑚はこれから幾度となく励まされることになります。
貴瑚の辛さを半分ちょうだい
貴瑚の辛さを半分ちょうだい。貴瑚がそれを罪だと言うのなら、私にもその罪を半分背負わせて。
本:『52ヘルツのクジラたち』より
アンさんが亡くなった経緯や、主税との間にあったことを全て見晴に話した後に、美晴から掛けられた言葉。
アンさんや貴瑚の近くにいたのに、十分に力になれなかった見晴は、そのことに罪悪感を抱いていた。
個人的には、美晴は全く悪く無いし、アンさんや貴瑚の事を想って精一杯やってくれていたと思います。
美晴のような友達がいてくれたから、貴瑚は52のことをよい方向に導くことができましたし、そういう意味では美晴の言う罪滅ぼしはできたんだと感じます。
いずれは与える側にならないかん
ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。
本:『52ヘルツのクジラたち』より
村中のおばあさんが、52の母親に対しての思いを語った言葉。
村中のおばあさんについて、最初はただのお節介おばあさんだと思っていましたが、理由を話せばちゃんと分かってくれて、後半はかなり頼りになる存在でした。
"人は、いずれは与える存在にならないといけない。"
おっしゃる通りですね。子供を持つ身として、大変参考になりました。
先生は今誰の目も見てないっすよ
「先生、昔言ってたじゃないすか。ひとの目を見て話す人間こそ正しいって。あの子たちはちゃんと目を見てるし、先生は今誰の目も見てないっすよ」
本:『52ヘルツのクジラたち』より
村中が、52の祖父である品城さんに対して言った言葉。
昔から、生徒の表面的な美しい所だけしか見てこなかった品城さん。
品城さんが昔言った“ひとの目を見て話す人間こそ正しい“という言葉も、結局は上辺だけしか見ていなかったので、村中に上手くやり返されてしまいました。
村中の最も輝いている場面です。
たすけてと言ったぼくのこえ、キナコはきいてくれたよ
「あの夜、たすけてと言ったぼくのこえ、キナコはきいてくれたよ」
本:『52ヘルツのクジラたち』より
今まで話すことが出来なかった52が、貴瑚のために頑張って言葉を発した場面。
貴瑚がやってきたことが、報われた瞬間でもあります。
読者の多くが、涙した場面だと思います。
以上、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
まだ『読んでいない』、もう一度『読み返したい』方はこの機会にぜひ!⬇︎
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